
最近ふいに、ラジオから聞こえてきたクイーンのフレディは誰よりも人から愛されたかったのだったという言葉が、耳に残っている。赤坂の中華料理にも、ただ、飽きてきた昨今。ランチを出しているレストランは星の数ほどありそうだが‥。中年向けのサブカルチャーはそして、存在しないということに気づかされたのだった‥。
朝、船に僕は乗り、それから、静止したままのように見える水平線の様子を眺めていた‥。若干、チケットの手続きをするのに手間取ってしまった朝。僕は船に乗る前、発券場がどこにあるのか、わからなかった。遠く日本から手続きした自分の名前が従業員のリストには記されていた。船にそれから乗った僕は、二階に上がったり外に出たりしていた。
よく晴れた日だった‥。時々こういった旅行に出るのは何度目だろうと考えていた。白い水しぶきが船の後にはできている。隣のベトナムで行なわれた戦争の面影もないような、静謐さをどこか感じさせる景色。この地で、なんとなく、生きていきたいと思う人がいることもうなづけた。船は、いつまでも走り続けた。
途中、サムイ島を経由し、バスで、着いた先からスーラータニ空港に向かう。サムイ島で降りていく人も多くいた。そこから、飛行機でバンコクまで戻るのが一番手っ取り早いようだった。バスで、我々は空港まで、坦々と来た道を戻る。僕は、ガイドブックやネットでバンコクの情報を仕入れていた。朝の2時発なので、それまでの7時間を遊び尽くしてやろうと考えていたのだ‥。蟹のカレーやマンゴーのデザートの店。そして、散見される、公然と売春の行なわれているとされる、怪しいカフェなど。
スーラタニ空港に着くと、チェックイン後にランチをむさぼり食う。パッタイとオレンジジュース。タオで食したものとは比べ物にならないほど、それは、深みのない味だった‥。ただ、やはり、田舎から都会に近づくほど、日本と同じようにどのような食べ物でも美味しさからは遠ざかるのかも知れない。