夏の水
ここにいることは、あの日ぼんやりしていた時を思いださせる。マウスの感触に。そして、コップの手触りに。テーブルも置いてある。それを、運び入れた二人の男の姿。彼らは今、どこで何をしているのだろう。運送屋のトラックは白かった。コップに入れていた水を入れ直す。いつのまにかなくなっていたからだ。いつのまにか、過ぎていた時間みたいに。野球中継だとか、映画だとか。そんなふうに無意識であることほど怖いものはない。しかし株に関しては無関心で、無意識でいたい。誰もがやがて、そう思うことだろう。未来を予想することにあまり意味はないのだと。腕をひっかくと、赤い血が出た。そして、風を体に当てる扇風機。
光を目に当てた、昼の、車のボディ。ドラムは規則的な音を今年も夏の夜空に響かせる。誰かが、それに合わせて体をゆらした。僕は昨日は、海で、低い波に乗っていた。プラスチックのボードを押した、いくつかの波。その、意識、そしてその記憶が今でも残っている‥。