暑いから海で

昔見ていたことのある公園。そこに生えていた木。笑顔で現れた友達。今は窓の外を見ている。音に、遠くを走る列車を思い浮かべる。光る月の姿を空に見る。音を出しているエアコン。冷たい鉄のこのテーブル。猛烈な高さを保ったままのマンションに、じっとしたままのアパートの屋根に、僕の気だるさを感じる夏だった。向上心をそこに失ったまま。行くはずだった山の景観、道を、車を飛ばして走るはずだった。そこで風を受けて。感じたことをそばにいた誰かに話しながら。木々の匂いをかいだのだと思う。

海に、今日は行ってきた。理由は部屋が暑すぎたからだった。冷房が効いているとけっこう体に堪えるのが怖かった。でも、こういった問題を抱えている人は知らない。しかし暑ければ冷房をつければ良いという発想は電気が足りなければ原子力発電をすればよいという考えに似て、思慮に欠けている部分が実はあった。というより自分がオッサンだからかもしれない。しかし海に着くと、台風で期待していた波がそこまで立ってはおらず、驚いた。ほぼ、普段通りの波である。足を水につけると、冷たくはなく、泳ぎやすかった。やはり8月がベストシーズンの水温のようである。上がってから、硬い堤防に腰かけてアイスを食った。毎年来ているパラグライダーのオッサンを空に見上げる。でも、きっと沖の方に行かないのは、危険だからだろう。冷たいアイスと、足の指に入る砂の感覚、ただ流行歌はそこになく。フィッシュマンズを聴いてバスで帰った。