昔のことを夜風に

引越しも終わり、少しだけ涼しくなった気のする風に吹かれる、そして、こうしていることの意味を改めて考え直している。僕の住んでいた部屋に残してきた汚れやごみと、持ってきたものとの違い、盆近くになると、それから、祖父の家を思い出すことがあった。祖父の家は雪国にあった。祖父の、葬儀の日と、そこに置いてあった漫画を兄と良く読んでいた時のことを。漫画は火の鳥で、かなり希少価値のありそうな古さだった。内容は駕王だとかの話だったと思う。古びたアーケード街のある街の、トイレからは大きな山が見えた景色は美しくもどこか寂しげで多分僕の遺伝子の中にもこの景色はあるのだと何となく思わさせられた。

そして今日も東京の郊外の片隅で、僕の体は生きていた。セミのなきやまない夜を感じ取りながら、今日も僕は生きていたのだ。