暑さに慣れた

ここでいつもと変わらない景色を知って、そして、過ぎた日に見たり聞いたりしたいろいろなものやことのことを思い出すのだ。その確かな花や物の色や形を、無いことを知ることで、今は。通りかかったコンビニの前の理髪店の横に、仏壇用の花が売られているのに気付かされた。今はユリの香りが漂っている。ユリの、どこか記憶に残されていた特徴のある匂い。でもそれはなぜだろう。秋や春にはあまり花の匂いを嗅がないからだろう。日本には香りの文化はないのだと聞いたことがある。言われてみればそうかもしれない。でも、花には香りが無いにしても、油だとか、潮の香りから派生したものはないだろうか。
電車が走っている。今日も、そこで何かを急ぐようにして、明日も走ることだろうと思う。人を乗せて、僕の知っているあの街に。この街のたえることのない開発と、破壊。そこからえられた木材で、また違う何かが組み立てられるのだ。また近所の空き地でも、アパートの建設がはじまったようだった。