渋谷のルート

何かを考えながら、渋谷の改札を抜けて歩き出す。街は、雲ひとつない、明るい空だった。僕の昔通っていた専門学校の思い出。そして、長い苦しみを味わわせられた会社の内定通知も、この高架橋のどこかで受けたものだった。僕には社会性と呼べるものは欠落していたのかもしれないと、階段を登っていた。尾崎豊の、すでに忘れ去られたかのような落書きがいくつも。彼の命日には、ギターを持った若者がそこに立っていたものだった。同じように、僕も、ファンであったし、一緒に歌いたかったけれども…。でも、その日に戻るには、失うもののほうが、多すぎたし、不可能な話だった。最近は走ることも、膝の曲げ伸ばしもけっこう容易ではない。筋力を維持するということ自体が、難しくなっていた。僕は目の前の道を、ただ、歩いていくほかなかった。