初冬の通り、バンコクの思い出
  • in池袋東口

 

日暮れに散歩すると顔が逆光で見えないので気が楽だった。駅の通りへ向かうと、すれ違う暗い顔の人ばかりだが‥。しかし休日というのは、それぞれの暮らしがあるから歳を取れば取るほど関わり合うのが面倒というやつだった。でも、夏と比べれば冬は刺激の強い格好の人も減り、人通りも落ち着いて、少なくなる。

 

そういう意味で、冬のほうが今は好きだが。歳を取り、暑いのも急激に苦手になってしまった。どこか怪しい雰囲気を感じさせられながらも、僕が、バンコクのレストランで食事をしていたあの日のことを思い出す。バンコクということもあり、一人で来ている人間は日本人に関してはあまり珍しくもないようだった。タオ島では、真っ先にヘンな目で見られたけれど。かわりにタオ島での食事は美味しかった‥。プーパッポンカレーという、カニのカレーを頼むと、割と時間がかかった。ネットで噂されていた料理である。テレビでは、韓国の番組が放送されていた。毒蜘蛛などを入れた箱に顔を突っ込まされるというナンセンスな内容。日本ではあまり見られない若者向けの、刺激的な内容だったかもしれない。ドラマにしても、ストレートな恋愛を描くものが多く、需要とする層の年齢の違いや経済力を得た文化の勢いのようなものを感じさせられた‥。

 

そして運ばれてきたカレー。さっそくカニを食するも、味があまり感じられない。ルーも、タオ島で食べた同様のものに比べると、同じかやや劣っているように感じられた‥。やはり食材の鮮度の違いなのか‥。日本の毛ガニの味を愛しく思いながらも、家庭的な雰囲気の女子にチャングビールをついでもらいつつ、完食。3000円と、タイにしてはかなりの高値。やはりタクシーのすすめを断って、ソンブーンに行くべきだったと、後悔‥。

 

そうこうしているうちに、後ろを振り返ると、行きに乗せてくれていたドライバーの若者が、こちらに手をふっている。私はもう、彼の勧めるソープではなく、マンゴーの店に行こうと画策していた‥。そういった場所には、一人で調べて行ったほうが良いということは、この年になると、すでに誰もが知っているように、私もなんとなく知っていた。