逗子の波紋

僕は海を泳いでいた気がする。いや、泳いでいたというよりも、表層を漂っていたのだ。そんな気がさせられていた‥。シュノーケルで覗くと、ナポレオンフィッシュのような、僕の愛する黒鯛たち。食べても、鯛のようにはあまり美味しくはないのかもしれないな。一匹に手を差し出すと人に慣れているのか、そこからは逃げなかった。彼らは浅場に人の捨てた食べ物などをあさりに来たのかもしれない。僕はそれから、カレイを砂地に探した。大きな岩や、ヤドカリの殻のようなものが宝石のように砂の上には転がっている。
それから、外国人の女性を僕は何人か見かけた。子供や大人。景色を映して遠くを見つめているような目をしていた彼ら。僕は自分の荷物を置いていた場所に戻った。若い女を二人連れている男が、そこには、横たわっていた。どういう関係なのか、話の中からは何もうかがい知ることはできなかったが‥。