病院でコレクチム軟膏という薬を処方してもらい、ようやく地獄から抜け出せたような感覚がする。僕は一週間ほど前までその存在自体を知らなかったのだ。そして、それがあることを知ったのは、ネットの中でのことだった。発売は2020年とのことだったが、まだ医者に出すようには言われたことのない薬だった。それをつけると、それまでつけていた唐辛子のような痛みのあるプロトピックという薬が嘘のように思えるほど、刺激が無く、助かったと思った。僕のこの時期の悩みがどうにか消滅したような気がした。僕は生まれたばかりの子供のように目を輝かせて窓の外を見ていた。僕は、やっと、それまで失われていたーーこの世界を取り戻すことができたかのように思えた…。
しかし、この薬の発売が2年前だということを考えると、生まれてくるのが何年か早かったとしたら、この薬は存在しなかったということが想起される。僕は、つまり、こういった薬に依存しているのである。子供の頃から、そうだった。当時はまだ、ステロイド自体が存在していなかったことを覚えている。クラスでも、皮膚炎だった人は、まだ少なかった。でも仲の良かった友人がアレルギーだったので彼の見舞いに行ったことはあった。その時にバスキアの展覧会が行われていて、そこに行く前に、そっちに行ったことも、覚えているけれど。日本でのバスキアの展覧会自体が珍しく、僕はポストカードを何枚か買っているところを知り合いの女性に見られて、話しかけられたことを覚えていた。その時逃げたことを今でも思い出しては後悔しているのだけれど。多分シャイだったからそうしたのだと思う。場所は、デパートの上の階だったかもしれない。最近、バスキア展が同じようにどこかでやっていたけれど、そっちの方の記憶はあまりなく、ほとんどないというのは、不思議なことだった。薬の方は冬はどの程度効くのかということが不明点ではあった。でも、今は完全にステロイドが効かなくなっているので、この薬があるということが、僕にとっては神のような事実に思えた。そしてバスキアのポストカードは今でもまだ引き出しに入っているので、今度見てみようかと思うのだ。今でもまだ、その画のイメージを、思い出すことができるのだ。