歯の治療のことは、秘密

人気のない街を歩いていた。肌がアレルギーの、子供の頃の遠足の朝を思い出していた。僕は、日記を書くことは、誰のためでもないので、少しだけ虚しい行為だった。空を見上げる僕は、僕が時々描く具体的な形を持たない絵を描くこととよく似ていると思う。遠い昔に見た山は、今も見た時と同じ風景にそびえているだろうか。手にしていたコップは、テーブルに置かれた。そして僕は山の名前を口にしてみるのだ。今も、目の前にその山があるものだとして、その思いを誰に言えばいいのかは、わからなかったが。

何もない部屋で時計を見ていた。理由もなく楽天でケーブルを購入する。かつて見たそれを。緑色のケーブル。僕はケーブルが好きだった。最近はネットの仕事が多い。遠隔操作する、サーバーの中を。しかし、カメラは対象的な機械で、感覚的な操作をするものだ。生き物とよく似たサーバーのレスポンスはやはりプログラムとは違う、特殊なジャンルではあるように思われた。窓は5月の新緑。良いものは生き物のような音を出す、スピーカーも。そんな、思ったことを口にする僕だった。