
やや高いものを買った時のベトナム人の女性のやや冷えた視線を思い出しながら、アジア系にしては、瞳は少し薄かったり青いかな、とも思っている。どこかタイを思い出す風景だが、土の色が朱色に近く、まるで血の色のように赤かったのが印象的で、ハワイでも似たような色の土を見たことがあったような気がした僕は青年の運転するトゥクトゥクで、ホテルに向かって走っていた。ベトナムで目にしたようなバイクの人の姿は減り、人影自体まばらだったが、部屋の広さが2倍はあるし、バスタブ着きだということで、苦労してここまで来た甲斐があったようにも思う。何も、泊まるために旅行しているわけではないが。そのまえに、ロビーでだいぶ待たされ、茶を出され、親戚のような歓迎を受けた僕。屋台も少なく、観光客もなく、画像的にも期待している感じのホテルだったが、30分ほど走って着いてみると期待以上で、コスパ的にはタイをも上回る出来だったけれど、明日の遺跡ツアーを予約しているとき、女性が妙に寄り添ってくれていたのが印象に残っている。そう、まるで親戚の家に着いたときのような感覚がして、子供の頃のように、懐かしかった…。たしかにまあ、ここまで来るのは大変だったけれど…、彼女は日の出ツアーは朝四時起きだと言っていたが、天気が急変し、翌日は曇っていた。
それでまあ、懇切丁寧な対応を受け、僕は部屋に案内された。南国ではよくある話だが、カンボジア人というのはベトナム人とは対象的に、親切なのだなと思う。まるで足かせをハメられているみたいに思える、タイ人の対応もよく似ていたが、人をバカにしているところがあった彼ら。空港のチェックインカウンターで、カンボジアでの旅行が2日だということを話すと、とても寂しそうにしていた係員の女の子の顔を思い出した。と同時に、これだけ親切にされると、彼らを裏切ること自体が少し怖くなったのだけれど、そうでなければあれほどの大きさの遺跡を作り上げることは難しかっただろうし、そういう意味では、彼らは愛国心といったものが、かなり強い人たちなのかもしれないのである。そんなことを考えながら、僕はとりあえずは、先ず風呂に湯を入れたのだった。