日本の水の味について

水を飲んで、それがどんな味だったのか覚えているのは、けっこうすごいと思う。水自体、味のあまりないものなのだが。フランスで飲んだものや、アメリカで飲んだもののことを。フィリピン、インドネシア。日本で飲んだミネラルウォーターで覚えているものは南アルプスの天然水だろう。最後に飲んだのは20年前だったが、最近飲むと、他のアサヒだとかの水と同じように、あまり美味しくなかった。理由はなぜなのかわからないけれど、その味は濁っていて、透明度が明らかに下がっているのである。僕は最近そんな経験をした。窓の外は、でも、やっと秋めいていた。インドネシアでのんだミネラルウォーターは美味しかった。フランスで飲んだそれ寄りは劣るけれど。でも、今はどうなのかはわからない。飲んだのは昔の話だ。その名の通りのおいしい水を飲むというのは難しい時代になった。

旅行記を読んでいると、食べることに集中している人によく出会う。体というよりも臓器を使う行為だが、それができる人というのはある意味羨ましい。昔は僕も、大食いだった頃があった気がするけれど、今では次郎ラーメンでさえ完食は難しい。冬になるとそこにはよく行ったものだった。自転車を飛ばして、目黒通りを駆け抜けた頃。なんだかコスパが高いと思っていた。振り返れば、僕はそんな日々を生きていた。それを知っているのは、木ぐらいのものだろう。虫の音だけが今は聞こえている、それを思い出させる、でも確かなものとしではなく。食とは宇宙のようなものだと感じることがある。