思索をめぐらし
今は生きているように思える気がする。昔のことを思い出しながら。僕の走っていた競技場の景色を。円を描いていたトラックのコースと、暑かった日のことを。でも、今は誰もいないのだ。見ていた景色の全ては過去だ。あの日は池袋を歩いていた。ドンキで友人と待ち合わせした日。ドンキの、シューズコーナーだった。若いカップルが、B級ブランドについて真面目に話していた店の隅っこ。僕は年末はどこかいじけたマジシャンの、会社のマジックショーを見ていた。
あの頃はひどく寒い道を歩いて帰っていた。コートでないことには、寒さをしのぐことは困難なようにも思えるほどで、薄手のダウンでは厳しかったというのもあって僕はそれをネットで購入したものだった。それを着て最寄り駅のミスドで時間を潰していた朝。そこで、何をしていたというわけでもないのだが、時間だけが流れていた。僕はいつも思っていた気がする。僕の生まれ育った路地の街の一角を。ある日、僕は家族でその家を出て、今の実家に住みだしたのだけれど。何かを語ることは現実を曖昧にするものだ。
時々何かを確かにすることで。見ていることを、時々、でも、ぼんやりと思っているのだ。そこから、遠くに離れていきそうになる感覚を僕の中で感じながら。僕は、そこに確かに存在していたのだと思う。公園の中に落ちていた落ち葉を踏みしめながら、草餅の味を思い出している。電車の走る音は、冬はあまり遠くから、でも、聞こえなかった。